カサ・ビセンスの歴史
この建築はガウディ初期の作品に属し、「エル・カプリチョ」と同時期に制作されました。両作品は、遠く異国の地に由来する装飾要素への当時の関心を反映した、視覚的かつ美的インパクトの強い造形と素材表現を共有しています。この傾向は後に多くのモダニズム建築の室内空間へ広がっていきました。
このプロジェクトにおいて、ガウディは自身の技術力、知識、創造性を存分に発揮する機会を得ました。建物の内外に見られる細部には、東洋建築、イスラム建築、ムデハル様式の影響が色濃く表れています。カサ・ビセンスは、後に彼の建築言語を定義することになる構造的・装飾的・象徴的要素を初めて用いた作品であり、その後の創作を予感させる建築でもあります。この建物は、陶芸、鉄工、プレハブ要素などの素材と技術を巧みに扱う才能を示す、まさにガウディの才能宣言ともいえる作品です。
外観では、露出した石造基壇部と、レンガおよび陶製タイルで仕上げられた上部とのコントラストが際立っています。外壁タイルは装飾プロセスを完成させる中心的要素となっており、ガウディは一つのモデルのみを用いて、驚くほど多彩な動きと色彩効果を生み出しました。彼がデザインしたのは、三輪の花、二つのつぼみ、そして数枚のマリーゴールドの葉を描いた一種類の滑らかなタイルで、あらゆる方向に組み合わせられるよう考案されています。このシステムにより、低コストでありながら、絡み合う花畑のような豊かな視覚効果が生み出されました。さらに、白と緑の標準タイルを組み合わせることで、卓越した色彩と装飾効果を実現しています。
庭園側のファサードでは、東洋風の幾何学模様を持つ可動式格子戸が特に注目されます。これにより光の取り入れ方や空気の流れを調整することができました。また、サロン前には噴水が設けられ、室内全体に涼しさをもたらすよう設計されています。
自然は家全体に存在しており、ガウディは外部の鉄製フェンスのデザインにも自然を着想源として取り入れました。当時この敷地にはシュロが多く生育しており、フェンスにはその葉の間に花芽を配したモチーフが繰り返し用いられています。
豊かな装飾性は内部にも続いています。ガウディは、床のローマ風モザイク、壁画、漆喰装飾、スグラフィートなど幅広い装飾技法を用い、スズメ、ハチドリ、フラミンゴ、カササギ、ツル、ブドウ、サクランボ、オリーブの木、トケイソウ、イチゴノキの葉など、動植物をテーマとした装飾モチーフによって、豊かな造形美と色彩表現を展開しました。
喫煙室は、この家でも特に独創的な空間のひとつであり、彩色された石膏ムカルナス天井にはムデハル様式の影響が明確に見られます。壁面は、エルメネジルド・ミラリェスが開発した紙粘土製の厚紙タイルで装飾されており、一つの浮彫モジュールを繰り返すことで陶製タイルのように見せ、空間の境界感覚を曖昧にしています。ミラリェスは後にこのシステムを特許登録しており、ガウディとの共同実験が存在した可能性を示しています。この素材は軽量で低コスト、耐久性があり施工しやすく、視覚的効果も高かったため、家の他の部屋でも使用されました。
カサ・ビセンスにおいて、ガウディは初めて人が歩ける屋上空間を設計しました。それは逃避と瞑想のための場所であり、19世紀のバルセロナを見渡す本格的な展望台でもありました。建物の各角に配置された塔とドームには、イスラム建築と東洋建築の影響が表れています。
オリジナルの庭園やガウディ設計の滝は失われたものの、カサ・ビセンスは今なお、若き日の革新的で装飾性豊かなガウディ精神を象徴する建築であり続けています。
カサ・ビセンスは1969年に歴史芸術記念物(BCINカテゴリー)に指定され、2005年には「アントニ・ガウディの作品群」の一部としてユネスコ世界遺産に登録されました。